水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」を読んで

水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」

私には経済を語れる知識はありません。ただ長年、グローバルな外資の産業機械関連の営業として市場を見てきて、もう成長という順風が吹くことはないのではないか、と肌で感じていました。

この本はそんな私の根拠の乏しい予感と経済対策に対する疑問を、論理的に鮮明にしてくれました。まさに目から鱗が落ちる一冊です。

この1年に読んだ本で、成毛眞の「40歳を過ぎたら、三日坊主でいい」、藻谷浩介とNHK広島取材班の「里山資本主義」、ひろさちやの「貧乏のすすめ」、佐藤優の「人に勝つ極意」など、著者達はもう中間層が潤える経済成長はないという前提で、どのように生きるかを述べていたように思います。

水野和夫著の「資本主義の終焉と歴史の危機」は、簡単な新書ながら、短期の景気分析ではなく、資本主義の歴史的うねり、そしていま資本主義が直面している危機を説明しています。専門家が読める内容なので、少し難しい経済用語も出てきますが、非常に分かりやすく説明されています。うまく要約できないので、一部分かりやすかった箇所を引用紹介します。

経済成長という信仰
——私が資本主義の終焉を指摘することで警鐘を鳴らしたのは、こうした「成長教」にしがみ続けることが、かえって大勢の人々を不幸にしてしまい、その結果、近代国家の基盤を危うくさせてしまうからです。もはや利潤をあげる空間がないところで無理やり利潤を追求すれば、そのしわ寄せは格差や貧困という形をとって弱者に集中します。—–

バブル多発と「反近代」、バブルは資本主義の限界を覆い隠すためのもの
—–バブル崩壊の信用収縮を回復させるために、再び「成長」を目指して金融緩和や財政出動をおこない。そのマネーがまた投機マネーとなってバブルを引き起こす。—–バブルの崩壊と生成が繰り返されていくのです。—–

ゼロ金利は資本主義卒業の証
デフレも超低金利も経済低迷の元凶だと考えていません。両者のどちらも資本主義が成熟を迎えた証拠ですから、「退治」すべきものではなく、新たな経済システムを構築するための与件として考えなけらればならないものです。
——-したがって、アベノミクスのごとく過剰な金融緩和と財政出動、さらに規制緩和によって成長を追い求めることは、危機を加速するだけであり、バブル崩壊と過剰設備によって国民の資金はさらに削減されてしまうことになります。

もちろん、資本主義の終焉が明日起こると言うことではありません。中国のバブル崩壊によって荒波のような終焉があるかもしれませんが、次に来るシステム、脱成長という成長、つまり定常状態(ゼロ成長)の社会について書かれています。

長期景気停滞ではなく、ゼロ成長があたりまえになることを頭に入れて、覚悟と準備は必要ではないでしょうか。

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