狼少年なのか、 藤巻健史の『ドルを買え!』

『ドルを買え!』: 藤巻健史

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私は機械屋で系統だって経済を学んだことがない。だからときどき目に付いた経済関連の新書を読むようにしている。狡猾な政治家に騙されないように、このファクターが変わったら何が増減するのか、シンプルなフォーミュラぐらいは頭に入れておきたい。

勤勉な日本の人たちは「ギリシャの財政破綻危機」の原因は「ギリシャ国民の怠慢」にあるかのように言っている。しかし日本の巨大な財政赤字の落としどころが見えているという話は聞いたことがない。もしかしたら頭の良い人は「Xデー」を想定した備えをしながら、一方では「日本は・・・こうこうで、ギリシャのようなことは起らないよ」と言っているかもしれない。それか自分の時代には起らないようにと願っているのかもしれない。

『ドルを買え!』

「Xデー」に備えるマネー&キャリア防衛術

著者の藤巻健史は現おおさか維新の会の参議院議員ですが、モルガン銀行時代は「伝説のディーラー」と称されていたそうです。損得の責任がない理論屋ではありません。

この本を読んで、分かっていたようで何かモヤモヤとしていた金融緩和、国債発行、財政赤字、プライマリーバランスなどの関連がクリアになりました。

著者は、「狼少年」と揶揄されながら、日本の財政赤字はどうあがいてもソフトランディングできる出口はなく、ハードランディングの「Xデー」は迫っていると、警鐘している。つまり「Xデーの財政破綻」をさかいに日本円の価値が暴落してハイパーインフレになるということです。

序章の40頁を読んだだけで、もう勉強になっています。

一部を引用編集

ギリシャの債務残高は、GDP(国内総生産)の177%もあります。二年分のGDPのほとんどを借金につぎ込んで、ようやく返せる額です。ところが日本の債務残高は、はるかにその上をいく233%(OECDデータ。2014年11月時点)。二年分のGDP全部をつぎ込んでも、返しきれません。金額にして1057兆円(2015年6月時点)。驚くほどの巨額です。

プライマリーバランス(基礎的財政支出)も、日本は悲惨な状況にあります。プライマリーバランンスとは、税収など本来の「収入」と政策実行(公共事業や社会保障など)にかかる「支出」を比べて、プラスかマイナスかをみるものです。この指標がプラスになっていれば、新たに借金をしなくてもまかなえることになります。

危機的な状況なのに、なぜ日本は騒がれていないのでしょうか?

「日本の国債は9割以上が国内で消費されているから」よくそういう人がいますが、そんなことは理由ではありません。ギリシャはユーロに加盟しているので、ギリシャの中央銀行がユーロ紙幣を刷れません。日本の場合は、必要とあらば日本銀行が円をどんどん刷れば、年金でも借金でも支払えるので、お金がなくなる心配はないのです。でもこの話を聞いて、多くの人が「なんかおかしいぞ、話がうますぎないか?」と感じたはずです。—–

量的緩和をすれば、一時的に株価が上昇したり、円安で景気が良くなるのは当たり前の話です。量的緩和とは、簡単に言えば、民間の金融機関の間で流通するお金の量をジャブジャブに増やすことです。具体的には、日銀が民間の金融機関が保有する国債を買い取り、その代金を民間の金融機関に払うことで、民間の金融機関が持つ資産を増やすことです。

異次元の量的緩和は悪いことではなさそうですが、政策の良し悪しは短期的に判断できることではありません。出口の時点、つまり量的緩和を終えた時点で、はじめてトータルに評価することができます。

そのような視点から考えた時、アベノミクスの異次元の量的緩和政策は、後々、間違いだったと断罪される可能性が極めて高いと思うのです。このままでいけば、ハイパーインフレが起きて、円が大暴落する—。私はかつてないほどの危機感を覚えています。

ハイパーインフレは日本の終わりではないようです。大目次を紹介します。特に第3章のキャリア防衛術は若い方に参考になります。

序章:ギリシャより危機的な日本が騒がれていないのはなぜか?

第1章:ハイパーインフレへ一直線にひた走る日本

「特別コラム」:Xデーの「引き金」となるのは何か?

第2章:ハイパーインフレ後に生きるための「お金の守り方」

第3章:ハイパーインフレに最も強い資産はあなた自身だ!

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