「知の巨人」は今をどう考えているのか『新・リーダー論』

アメリカのトランプ大統領、ロシアはプーチン大統領、トルコの大統領はエルドアン、フィリピンの大統領のドゥテルテ、そしてイギリスのEU離脱と、世界のエリート達はリーダーの座から蹴落とされている。正論をあれこれ言って騒ぎ立てても後の祭りです。

元凶は格差にある。底辺層のボリュームを甘く見ていたエリートの敗北でしょう。では、彼らは理想のリーダーでしょうか。世界はどうなるのでしょうか。

『新・リーダー論』大格差時代のインテリジェンス:佐藤優・池上彰

この本の表紙にエリートの時代は終わった!

裏表紙には「平和」な「格差」に甘んじるか?「平等」な「戦争」に突入するか?

と書かれている。興味をそそる知の巨人二人の対談です。この本は、アメリカ大統領選挙の前、2016年10月20日に発行されています。しかし両者はトランプ大統領誕生を前提に対談しています。

最初の章「リーダー不在の時代 」では、次のようなことを述べている。

一部を引用編集

先進国で、大衆迎合型のポピュリズムが勢いづいています。社会の指導者、エリート層に対する大衆の不満が爆発した結果と言えます。従来のリーダーやエリートのあり方それ自体が問われているのです。

経済のグローバル化、すなわち新自由主義と深く関係しています。格差が拡大し、階級が固定化していくなかで、エリートと国民の信頼関係が崩れ、民主主義がうまく機能していないのです。

社会全体がアトム化して、社会の連帯が弱まっている。方向を見失って、人々は不安から強いリーダーを求めている。しかしバラバラにアトム化したところでは強いリーダーは出てきようもない。

「強いリーダー」という表象をまとって、さまざまな人が出てくるのですが、その人たちが本当に強いかと言えば、そうではない。あるシステム内部では強い権力を持っていても、その外側に権力を及ばせていない。

エリートは、自分自身に対して自信を喪失する一方で、社会に対する責任も放棄している。日本の裁判員制度がその典型です。

ロビンソン・クルーソーは、難破した船から人間が作ったさまざな道具を持ち出しました。それで生き延びたのです。そこに人間の人間たるゆえんがあり、「群れをつくる動物」として、群れを何らかの形で動かす「組織」と「リーダー」が必要です。

どの組織でも10年くらい一生懸命仕事をすれば、おのずと一人前になるものです。「組織が人を引き上げてくれる」のです。

どんな企業でも、どんな組織でも、「現場に任せる、ただし何かあったら俺が責任をとる」というのが、理想のリーダーですね。

会社が総務主導になって、「やっていることはすべて社長に報告しろ」などと言い出す。「透明化」と言えば、聞こえはよいですが、それだけでうまくいくほど、組織は単純なものではありません。

「自分は王様」と思っている人が多くなっている。霞ヶ関の官僚の大多数も、「自分はすぐにでも次官の仕事ぐらい務まる」と思い込んで、課長にもならないうちに選挙出馬したり、実業家に転身する。課長を経験していないような霞ヶ関のキャリア官僚など、何の使い物もにもなりません。組織を見渡すという修練に欠けているからです、

エリートほど新自由主義的価値観を当然視しています。そして社会全体の責任を思う前に、自己利益や自己実現ばかり優先しているのです。

一語一語に二人の知識と洞察が凝縮した対談集です。これからが本題です。目次を紹介します。

大目次

1「リーダー不在の時代」ー新自由主義とポピュリズム

2.独裁者たちのリーダー論ープーチン、エルドアン、金生恩

3.トランプを生み出したものー米国大統領選1

4.エリート対大衆ー米国大統領選 2

5. 世界最古の民主主義ポピュリズムー英国EU離脱

6.国家VS資本ーパナマ文書と世界の富裕層

7. 格差社会の経済学ー消費増税と教育の無償化

8.核をめぐるリーダーの言葉と決断ー核拡散の恐怖

9.リーダーはいかに育つか

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