中島たい子の『漢方小説』を読んで

「漢方小説」:中島たい子著

本屋で小説のタイトル「漢方小説」が気になり、手にとって開いた、最初のページに五角形の陰陽五行説(木火土金水)のスケッチが描いてあった。読み始めて、思わず顔が緩んでしまった。最初の一ページ目から面白い。そして隣のドトールで読み終えた。最後のページの参考文献に書かれた東洋医学関連の著書を見て、作家はすごいな、と感心している。

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30代前半の独身女性の心理と体調

私は30代前半の独身女性の心理状態はよくわかりません。この小説は、光を浴びていたはずの20代から、30代前半になって、ふと気づいたら、陽が落ちた公園に取り残されたような独身女性の心理状態、そして体調の不良を、「漢方医」の治療を通して描写した、面白い視点の小説です。テンポがよく、そしてコミカルで、少し長いエッセイを読んでるようです。第28回すばる文学賞受賞作品でした。

病名は「色々なところが弱い、あなただけの病気です」

主人公、川波みのりは31歳は、ある日、20代の頃「結婚してください」と言われたことがある昔の恋人から「地元の女性と結婚する」と打ち明けられ、おもわず、その時食べていたオリジナルうどんの具の牡蠣を飲み込んでしまう。そして、取り残されたような恐怖感が重なり、体があばれだすような胃痛で、救急車に運ばれることになる。
体調不良が続き、4軒の医者を渡り歩くが、どこでも「異常なし」、そして5軒目が「漢方医」だった。お腹の触診で、自分でも自覚がある悪い一点をずばり指で抑えられたことに驚き、そして先生にも好意をもってしまう。
あなたの病名は「色々なところが弱いというあなただけの病気です」と言って、西洋医学の一点対処療法ではなく、弱っているところ順に直してゆく東洋医学の治療を専門用語とコミカルなシチュエーションで書かれています。

最後の章が好きです。

気という物質をもらっていたのだ

「漢方医」は脈じゃなくて手を取って握手して「元気になってよかったですね」と言った。その後、先生は上海に帰ったことを知った。一人「東京都薬用植物園」を訪ねる。

前に生薬のことを地味などど言ったけれど、それも大間違いであることを知った。なんと生命力に溢れている植物たちだろう。個性的でパワフルだ。私が飲んでいたお馴染みの生薬の名が、あちこちの立て札にある。私は何年も文通していた相手に初めて対面するように、ワクワクしながらひとつひとつの草に挨拶していった。————-
ここには何かがいる。その『何か』言葉をあてはめるとしたら、やはり『気』という言葉しか思い浮かばない。薬を飲んでいたのではなく、彼らから気という物質をもらっていたのだ。

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