渋谷『ヨシモト∞ホール』と又吉直樹の『第2図書係補佐』

又吉直樹の『第2図書係補佐』

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こんな書き方があるのか!

渋谷のセンター街の奥に、若手芸人のための劇場『ヨシモト∞ホール』がある。『第2図書係補佐』は、その劇場のフリーペーパーに又吉直樹が連載していた「本を紹介するコラム」をまとめた書評エッセイです。連載は2006年6月からです。作家になる前に書いたものです。

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本の題名は第2図書係の補佐で、かなり遠慮した題名になっています。その理由について次のように述べてます。
「僕の役割は本の解説や批評ではありません。僕にはそんな能力がありません。心血注いで書かれた作家様や、その作品に対して命を懸け心中覚悟で批評する書評家の皆様にも失礼だと思います。だから、僕は自分の生活の傍らに常に本という存在があることを書こうと思いました。本を読んでから思い出せたこと。思い付いたこと。本を読んだから救われたこと。」

書評ではないから面白い

本とは何ら関係なさそうな、自身の笑い、疎外、羞恥、努力、道化、涙のエピソードを書いています。そして最後の数行にさらっと書評の本が出てきます。その数行がワサビのように、ピリッと効いて、引き締まった文に変わってしまいます。

苦労して作り上げた又吉直樹流書評スタイルでしょう。自身ののエピソードに、本の栞を挟むことができるのは、読書の量でしょう。

古井由吉の『杳子(『杳子・妻隠』)』の書評で、又吉直樹が数年一緒に過した彼女について書いている。一部を引用します。

・・・二ヶ月が過ぎた。その人と僕は一緒に過すことが多くなった。その人は凄く明るい人だった。
・・・
その人は「何で変なことばかり言うの?こんな頭のおかしい人には初めて会った」と言った。
「外では変なことを言わないように、普通にしよう普通にしようと思っていたら疲れて無口になってしまった」と言ったら不憫に思ったのか。
「じゃあ、私の前では変なこと言っていいよと言った。
「でも疲れるやろう?」と聞いたら、その人は「疲れても大丈夫」と笑顔で応えてくれた。
しかし、大丈夫ではなかった。その人は僕から毒を吸い元気にしてくれた。だが反対にその人は随分と静かになった。出会ってから数年が経っていた。その人は疲れ果てて東京での生活を止めてしまった。今は田舎で静かに暮らしている。

その人は日常的に本を読む習慣がなかったが、僕が大好きな作家の本だと説明し『杳子』を貸した。「私は馬鹿だから何も解らないけど、あなたが、この本を好きなのは凄く解る」とその人は言っていた。

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又吉直樹のように大量の本を読んで、読んで、再読して、自分の海を創りたい。

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